広告運用における契約書や与信の重要性

毎月キーマケLabでは、フリーランスや副業で広告運用をされる方が知っておくと得をする、あるいは知らないと損をするような情報を「アドむすび」の事業開発担当者である石川 優二氏@yujisikawaとの対談の中でお伝えしています。

第1回:広告運用の初案件って、どのように受注すればいいんでしょう?
第2回:個人で広告運用する際に身につけておくべき強みやスキルとは?
第3回:広告運用における手数料って、どのように考えるべきなのでしょうか?
第4回:広告運用における契約書や与信の重要性

第4回の連載である今回は「広告運用における契約書や与信の重要性」というテーマでお伝えしていきます。

目次

広告運用を始める前に契約書は必ず…

川手:石川さんのところには、実際に様々な方がご相談に来られることがあると思うのですが、すでに運用されている方でトラブルに発展していて、ご相談に来られる方も多くいらっしゃるんでしょうか。

石川:そうですね。一定数そういった方はいらっしゃいます。

川手:どういったトラブルが多いのでしょうか。

石川:例えば、クライアントさんから「成果が出てないから払いたくない」と言われてしまっているパターンであったり、広告の審査落ちが発生してしまってそれに対する対応が遅れたので「審査落ちによる機会損失(その分売れるはずだった分の売り上げ)を補填して欲しい」と言われてしまっているケースであったり、様々ですね。

川手:それらのトラブルに、何か共通している点はありますか?

石川:やはりきちんと契約書を取り交わしていないケースが多いという点でしょうね。

パフォーマンスに関しては取り組んでみないとわからない部分もあるのでここでは直接言及しませんが、そういったトラブルに後々に発展するケースにおいて、契約書自体を取り交わしていないというケースは結構多いです。

もしくは、契約書の内容に抜け漏れがあって、双方の主張がぶつかり合っているケースが多いです。

川手:感想にはなってしまうのですが、このご時世で契約書を取り交わさないって相当リスキーだと思うんですけど(苦笑)実際そういった前提の相談は多いんでしょうか。

石川:そうですね。よくあるのが金銭面のトラブルに発展するケースですが、2ヶ月に1回は必ずありますね。

川手:石川さんはそういった相談がきた場合、どのようにされているんでしょうか?

石川:リーガルな領域に関しては、もう正直手の出しようがないんですよね。

早めに弁護士に入ってもらう方向性での調整を手助けしたり、そういった対応になってしまいますね。

川手:当然ですけど、弁護士さんに入ってもらえたら、ひと安心…というわけでもないですもんね?

石川:そうですね。

例えば、結果的に双方弁護士を立て合って争うパターンになったケースとかで、僕から見ていて「これは100%向こうが悪いよね」という場合もあったりするのですが、そういった場合でも費用を100%回収できないケースって結構多いです。

川手:そうなんですね…

石川:だから当たり前のことなんですが、契約書はしっかり取り交わすこと、可能な限りプロの方に入ってもらって契約書の内容に不備がないか、抜け漏れがないかを見てもらうというのは、とても重要なことなんです。

川手:そうですね。

なぜ契約書を取り交わさず進めてしまうのか

川手:逆になぜ、それだけのリスクがあるのに契約書を取り交わさずに広告運用を実施してしまうケースがあるのでしょうか。

石川:そもそもリスクを正しく認識できていないケースや、もともとお付き合いや取引があってなあなあになってしまっていて…というケースなどが多いでしょうか。

あるいは、事業を拡大・成長させていくことに夢中になりすぎて、そこまで手が及んでいなかったケースなどが考えられるでしょうか。

川手:普通に契約書を取り交わせば防げたようなケースで損害を被ることも多いんですよね。

石川:もちろん。

例えば、実際に裁判をするとなると、多くの場合弁護士さんにご相談して、実際に裁判に発展する場合は様々な費用が発生するだけではなく、時間や体力、集中力などといったご自身のリソースを奪われることになります。

川手:まさに、前回の対談でもお話ししたように、ただでさえ個人のリソースって有限なのに、それが無慈悲にも奪われるわけですね。

個人だと特に、リソースが有限な点が悩ましいところですが。

広告運用における手数料って、どのように考えて設定すべきなんでしょうか?」より引用

フリーランスで独立される方の中には「広告運用で勝負していきたい」という思いで独立される方もいらっしゃる一方、広告の運用とか、パフォーマンスに直接関係ないところにリソースを割かなければならない状況に追い込まれていってしまうのって、本末転倒ですよね。

石川:そうですね。なので、繰り返しにはなりますが親しき間であったとしても、契約書はきちんと結びましょう

最悪の場合、倒産する可能性も

川手:お金の問題については、仮に契約書を締結したとしても起きてしまうリスクがあるように思います。例えば、以前に桜井さんが「広告費を立て替えていたが飛ばれて黒字倒産しかけた」という話をされていたのを見かけたことがあります。

広告費を、ウチの会社で立て替えて広告を出す形を取っていた時に、広告費1000万円を自分の会社から出していたんですが、ある日突然、クライアント様と一切連絡が取れなくなり、音信不通になってしまったんです。
うちはその1000万円を払わなければいけなく、黒字ではあったんですが、そのまま倒産してしまうんじゃないか、という状況になったことがあります。
次の支払いまでに融資が間に合わなく、もう会社がまずいと思っていたんですが、周りの人が一時的にお金を貸してくれ、僕は助けられた経験をしています。

貧乏人の特徴 TOP3/個人で生きる選択 – 【俺式】桜井茶人の備忘録」より引用

川手:そういった場合も想定し、例えば「広告費はクライアントさん側で支払ってもらえるようにしておく」など、いかがでしょうか。

広告費を立て替えていたことによって莫大な売掛債権を個人が背負ってしまうのは、とても危険なことのように思います。あるいは、掛け払いサービスや決済代行サービスを使うのも1つの手かもしれませんが。

広告費などは特に取り扱う金額として大きくなりやすいので、そこはクライアントさんの方で立て替えてもらえるようにしておくなどといった対応を、特に個人の場合はした方が良いようにも思います。

石川:そうですね。ただ一方、クライアントさんの方で広告代理店に発注することによって広告費を立て替えてもらい、キャッシュフローを安定させるような効果を求めているような場合、発注自体のメリットが減ってしまうリスクはあることは正しく理解しておく必要がありますね。

川手:その点については、以前にアナグラムさんのブログで詳しく解説されていましたよね。

広告代理店では、広告運用においてGoogleやYahoo!に支払う広告費(媒体費)を立て替え、翌月や翌々月までに広告主からお支払いいただくモデルを採用していることが少なくありません。その場合、広告主は1円も支払わなくても、何百万、何千万円分の広告を出稿し顧客を獲得できるため、先行投資型のSaaSビジネスなど、保有している現金以上に広告費を先に投資したい広告主にとっては一定のメリットがある場合も。これは広告主のキャッシュフロー(収入から支出を差し引いて手元に残る資金の流れ)を安定させる金融機能と言えますよね。

運用型広告における広告代理店の価値とは?サービスレベルを高めるために意識したい5つのこと」より引用

川手:あと、クライアントさんのクレジットカード払いの場合、期限をどちらが管理するのか、予備の支払い手段をどのように設定しておくかであったりも、明確にしておく必要がありますよね。

でもよくよく考えてみた際に、個人で仕事をしていることをわかっていてその役割を期待され仕事を発注してもらうケースってほとんどないと思いますし、逆にその役割を個人に求めてくる案件って、なんだかちょっと危険な気がします(苦笑)

石川:そうですね。独立したてで、「これから広告運用でしっかりと仕事をしていくぞ」という時にそこまで気を使うのは難しいかもしれませんが、そういった点もしっかりと気を配ったり、危険を察知できるようにしておくことはとても大事なことです。

個人的にはアドむすびを利用されるフリーランスの広告運用者の方であってもそうではなくても、独立して1ヶ月、2ヶ月で倒産の危機に瀕するような事態は、できれば回避してほしいです。

川手:そうですね。そういった危険を回避したり、リスクをリスクとして正しく認識できる能力を身につけておくことも、独立する上では必須なのかもしれませんね。

そもそもの与信の重要性

石川:独立したてで、しかも限られたリソースの中で出来ることとなると限られるとは思うのですが、与信を見るのはとても重要なことですね

でも実際問題として、例えば「支払い能力があるかどうかを判断する」となったとしても、それって結構難しかったりするんです。

川手:はい。

石川:例えば帝国データバンクとか使って取り寄せて判断するとか。

あと法人としてどれだけ真っ当かを確認したい場合は、可能な限り過去まで遡ってどんなラインナップの商材を展開しているかを確認するとか、過去に消費者庁から行政処分を受けていないか、そういったところを見ていくような形でしょうか。

川手:前に個人で運用されている方に「与信をどう見ているか」と聞いたことがあるのですが、その方は「どんな人が働いているのか」も結構重視されているようで、例えばその企業のOpenWorkを見ていたりとか、5ちゃんねるみたいな掲示板やGoogle マイビジネスに寄せられた口コミ、SNS もチェックするようにしているとおっしゃっていました。

「残業代が未払い」とか「営業していると罪悪感が…」みたいな書き込みが見つかることもあるようでして(汗)

石川:そういった情報の中には、一方的に法人を貶めるために仕込まれたような口コミが含まれていることもあるため、1つ1つ慎重に見ていく必要があると思います。

ただ最終的に、そういったネガティブな情報のソースが複数存在し、実際にその会社の方と話を進める中で違和感を感じたり、危険性を感じる場合は、お仕事をお断りしないといけないケースもあるのではないでしょうか。

最後に

キーマケLab では全4回にわたり、これからフリーランスの広告運用者として独立することを視野に入れられている方向けに記事を公開してきました。

少しでもお役に立つような情報発信ができたのであれば幸いです。

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また本連載はアドむすびと連動した連載記事となりますが、アドむすびを利用されるのはフリーランスの広告運用者だけではありません。

例えば、マーケターや広告運用者の採用に悩んでいたり、行き詰まりを感じている方もアドむすびの利用者であり、そういった方に向けて次回以降は情報発信を行っていきます。

執筆・編集:川手遼一
対談:石川優二
イラスト:松岡タイキ

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