個人で広告運用する際に身につけておくべき強みやスキルとは?

What are the strengths and skills that individuals should acquire when managing advertising?

毎月キーマケLabでは、フリーランスや副業で広告運用をされる方が知っておくと得をする、あるいは知らないと損をするような情報を「アドむすび」の事業開発担当者である石川 優二氏@yujisikawaとの対談の中でお伝えしています。

第1回:広告運用の初案件って、どのように受注すればいいんでしょう?
第2回:個人で広告運用する際に身につけておくべき強みやスキルとは?
第3回:広告運用における手数料って、どのように考えるべきなのでしょうか?

第2回の連載である今回は「個人で広告運用する際に身につけておくべきスキルや強みとは?」というテーマでお伝えしていきます。

目次

身につけておくべきスキルとは?

川手:フリーランス、広告代理店に関係なく、僕らの仕事って基本的には広告主の要望をしっかりと聞き、その要望に応じて大手プラットフォーマーが有している広告枠を最適な形で運用するところにあると思っているんですけど、そのうえで「来月からは手数料の低いところにお願いすることになりました」「〇〇さんとは来月末までで」とならないようにするためにも、どのような武器や強みを用意するのかというところが非常に重要になってくると思っているのですが、特にフリーランスの方はどのような点に配慮し、スキルや強みを身につけると良いと思われますか?

石川:そうですね。まず強みの部分からだと、ベースとして広告周りの知識やスキルがあった上で、その周辺領域で何か1つ強いものを持っているといいと思うんですよね。

川手:滝井さん@hidenoritakii が以前に記事の中で体系立てて説明していた曼荼羅はまさにそれですよね。

石川:その通り。

広告運用者からスタートするキャリアの広げ方。スキルマップでわかる、自分の強みを見つける一番の近道」より引用

石川:例えば タグ や API 関連で専門スキルを持っていると、それだけで重宝されることも多いですし、多くの広告運用者が挫折するようなポイントを突破できたりもします。

また逆に、まったく技術的な領域が理解できないと、そもそも土台にも立てないことが多いので、最低限技術系のスキルは習得しておくべきです。

川手:強みの話で言うと、僕は加えて、そもそも社会人としての基本ができるかどうかも結構大事だと思うんですよね。

例えば、直近で結構一緒に働いてもらっているデザイナーの方は、仕事のクオリティが高くて仕事が丁寧というのもあるんですけど、一次回答が早い点もとても魅力的なんですよね。

回答が難しい時でも、例えば Slack だったらスタンプをすぐに返してくれるとか、「12:00までに返信します」みたいなテキストをすぐ送ってきてくれる。

石川:基本は大事ですよね。あと普段、 Web 広告に関する質問を受けていて感じることなのですが、道具ありき、手段ありきの質問が多いように感じることが多いんですよね。

例えば「こういう案件なんですけど、YouTube広告で効率的に獲得できますか?」みたいな。

本当に大事なのはクリエイティブであったり、それを見た人に何を思って行動してもらえるかであったりなはずなのに、そういう質問をよく受けます。

もう少し上流の、マーケティング関連の古典的な知識や知見に触れておくだけで色々と見れるものも変わってくるし、そういう知識があるのとないのとでも、打ち手は変わってきますから、自然と差別化できてしまうはずです。

あと、そもそもそういった知識がないまま広告だけ扱っていると、結果的にできることや考えられることが限られてくるので、結果苦しくなってくるんじゃないかと思ってます。

川手:知識の重要性はうまく伝えないと、ただのマウンディングにも捉えられかねないので注意が必要ですよね。

「え、広告の仕事やってるのに DAGMAR1 も知らないの?大丈夫?」みたいな(苦笑)言っている人は本心からそう思っているんでしょうけど。

石川:(苦笑)

手段ありきに陥ることによる危険性

川手:でも手段ありきに陥るの、心情的にちょっとわかります。例えば、さとなおさんの『明日の広告』の中では、僕らが普段取り扱っているリスティング広告は「広告」ではなく「インフォメーション」として取り扱われていると言及されています。

たとえばグーグルのアドワーズなどその典型である。

消費者が検索した言葉に対応してそこに消費者のニーズに近い一行広告を載せるもので、それはまさしく「その消費者のニーズに最適化されたコミュニケーション」である。スマートでそつのない給仕なのだ。

でも、それは広告ではなくインフォメーションだ。
明日の広告』より引用

川手:僕は日々リスティング広告に触れる機会も多く、キャリア初期にもまずはリスティング広告を運用するところからこの業界に入った人間です。

そして僕は、リスティング広告もまた広告の1つだと思っているのですが(苦笑)

石川:(苦笑)

川手:「インフォメーションだ」という主張も、理解できないわけではないんです。

リスティング広告は旧来の広告のように、「広く告げ」てはいないですよね。そのため、旧来的な広告に比べると、広告が従来兼ね備えていたリーチ力みたいなものは、弱いように思います。

ただその一方、リスティング広告は現に悩みや課題を抱えて、実際に検索している人に直接アプローチできます。過去そんな広告媒体は存在していませんでした。加えて人間には「知りたい」という知識欲がある。その知識欲の大半を満たす検索エンジンという、究極的な発明品に紐づいているリスティング広告がすごくないわけがない。

先ほどお伝えした通り、僕のようにリスティング広告から Web 広告の世界に入った方は一定以上いらっしゃると思いますが、ただリスティング広告に日々触れて、その延長戦上で他の広告を取り扱おうとすれば…当然色々問題も起きますよね。

石川:そのとおり、だから自分は「広告から学んでいくのは危険」に思うんですよね。

例えば、広告を運用代行していくにしても、成果を出していって売り上げを上げて新しいお客さんを取ってくるってところが基本的には求められます。

そうした中で、どこかで問題が発生した時とか、課題解決していかなければならない時に、当然「これ広告領域だけじゃなくて、戦略フェーズや目標設定から考え直す必要があるかも」となった際に、広告領域しか理解ができていないと良い提案もできないですよね。

川手:今の石川さんのお話、以前に才流の栗原さん@kotakurihara がstand.fmで似たようなお話をされていました。

栗原さん曰く、「特定のレイヤーの課題は、特定のレイヤーの課題に関する情報のインプットから解決できることは実は多くない2」「1つ上のレイヤーの情報を集めると良い」のだそうです。

そのため栗原さんは実際に、マーケティングに関する情報を集めるのではなく、ビジネスや事業レイヤーの情報を集めているそうです。

もし仮に、これから強みを見つけていく段階であれば、そういったように少し俯瞰して捉えられるような領域に強みを持つといいかもしれませんね。

石川:そうですね。

コミュニケーションスキルの重要性

川手:石川さんが養成講座の受講生の方とお話をされて、一番相談を受けることが多いスキル系の悩みって何になりますでしょうか?

石川:コミュニケーションの話は本当によくあがります。例えばよく話し合わずに広告配信を進めてトラブルに発展したり、早期解約に繋がってしまったり。

川手:僕はコミュニケーションについては、「他者に対する解像度を上げる」しか究極的な解はないのかなと思っています。

相手がどんな立ち振る舞いを求めているのかであったり、言葉にはしていないけど振る舞いや、気にされている点などから「こういうことだよな…」と察して動けるかであったり、すごく重要なように思います。

「広告のパフォーマンスが良いんだから文句ないだろ?」と考えていた時期が恥ずかしながら僕にもあったのですが、ただ横暴なだけですよね。

それならアフィリエイト系でもっと手数料が低いところにお客さんは発注した方が良いわけで、広告で当たり前のように成果を出した上で何が提供できるのか、そこが重要ですよね。

文章でのコミュニケーション

石川:あとは同じくコミュニケーションでいうとメールやSlack、チャットでなどの文面によるトラブルも多いかもしれない。単純に何を言っているのか分からなかったり、長文だったり、誤字脱字や衍字、漢字の誤用が多かったり、人によって課題や問題点はそれぞれですが。

川手:文章については竹村さんの『書くのがしんどい』にも書いてありましたけど、苦手な方は音声を録音し、それを書き出すといいと思っています。

書くのが苦手でも、大抵の方は「話す」ことはできるので。

ただそもそも「自分自身は文章を書くのが人より苦手」と、まずは自覚を持つ必要がありますが(苦笑)

「話すように書く」は難しくても、たいていの人は「話す」ことはできます。ぼくは、まずICレコーダーに支離滅裂でもいいから音声を録音して、それを「文字起こし」して文章の素材を生み出す方法をよくとります。

とにかく言いたいこと、思いついたことをどんどんICレコーダーに入れていく。ICレコーダーがなければ、スマホの録音機能でもいいでしょう。どんどん声で入れていくわけです。

このとき気を配るべきなのは「きれいな日本語が話せているか?」ではありません。「言いたいことが言えているか?」「考えの核があるか?」「重要なコンテンツがその中にあるかどうか?」です。

ちゃんと「言いたいことの核」さえ語ることができれば音声入力は成功です。

書くのがしんどい』より引用

あと今は ChatGPT とか、生成 AI ツールが山ほどあるので、データの取り扱いには注意しつつ、清書してもらったりするといいと思います。自分自身にそういった強みはなくても、そういった小技、スキルを駆使することで平均値ぐらいまでは能力を引き上げることは可能なので、そういったテクノロジーを積極的に活用する方向性で取り組めると素敵ですよね。

石川:そもそも文章でのクライアントワーク、無理に文章で行う必要性がないものばかりですよね。

例えば僕のお客さんの中には、主に「忙しい」という理由でですが、クライアントさんが音声を録音し、音声ファイルをそのまま送ってもらっているというケースとかもあったりします。

この方法なら、たとえば時差があるようなケースでも音声でコミュニケーションを取ることが可能ですし、文字にする手間もかかりません。

川手:サービスを提供する側がそのコミュニケーションをクライアントに要求するのは少し難しいかもしれませんが(苦笑)

「自分は文章スキルが人より足りないな」ということをしっかりと自覚していれば無理に文章でコミュニケーションを取ろうとせずに「ちょっと今電話か、ハドルでやりとりできますか?」「5分でいいので Zoom できますか?」というやり取りが、自然とできるようになるはずなんですけどね。「自分は言語化能力が高い」と錯覚しないことも大事ですよね。

逆に言えば、それだけで回避できるミスやトラブルって結構あると思います。

ほんと、ちょっとの手間なんですが大きな差が出ますよね。5年ぐらい前に「結果的に発生する無駄なコミュニケーションコストを抑えて時間を捻出しその時間で技術を磨け」という記事を書いたこともあるのですが、ちょっとした差に気付けるかどうかが大事なんですよね。

参照:広告運用者が習得すべきコミュニケーションスキル

ただそういったものにそもそも気づくためには、「他者に対する解像度を上げる」必要があるんですけど。

石川:その通りですね。

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まとめ

個人で広告運用する際に身につけておくべきスキル、強みは次の通りです。

  1. 広告運用に関する基本的な運用経験
  2. タグや GTM に関連する基本的な技術知識
  3. 一次回答の素早さ
  4. 広告よりも一段上のレイヤーの知識や知見
  5. 双方にとってストレスのない意思疎通の実現
  6. 文面でのコミュニケーションスキル
  7. 他者に対する解像度の高さ

第3回のテーマは、「広告運用における手数料って、どのように考えて設定すべきなんでしょうか?」です。

執筆・編集:川手遼一
対談:石川優二
イラスト:松岡タイキ

  1. R. H. コーレイ氏が1961年に提唱した、広告効果を、認知・理解・選好・購買という態度変容の各段階についてあらかじめ目標設定し、その目標と実際の調査結果とを照合し、広告効果を測定するためのフレームワーク。詳細は『新版 目標による広告管理↩︎
  2. 栗原さんの stand.fm でも解説されていた通り、アインシュタインも同じような言葉を残しているそうです。調べてみた限り「We cannot solve our problems with the same thinking we used when we created them.(いかなる問題も、それが発生したのと同じ次元で解決することはできない)」が原文のようなのですが、出典元は不明でしたのでご参考程度に。 ↩︎

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