キーワードマーケティングがまだ6名体制だった頃から在籍する、執行役員の石川 優二氏@yujisikawaにこれまでの仕事に関することや、3月にリリース予定のフリーランスの広告運用者と事業会社のマッチングサービス「アドむすび」について、直接お話を伺いました。
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学生時代~キーワードマーケティングに中途入社するまで
まず石川さんのこれまでの人生について、色々とお伺いしたいです。
学生時代の話や、キーワードマーケティングには中途採用という形で入社されていると思うんですが、社会人経験などについてお伺いできればと思います。
僕の学生時代…本当にもう黒歴史だらけなんですけど(笑)
まず自分は徳島県の池田町(現・三好市)というところの出身なんですが、学生時代って実は僕元々いじめられっ子で(苦笑)
え、そうなんですか?
いや、まあ今もめちゃめちゃその経験って仕事にも生きてて、特に恨みとかはないんですけど。
今でいう引きこもり…とまではいかないけど、友達がテレビやゲーム、漫画…みたいな、そういった生活をしてるっていうのがずっと続いてたんですよね。
社会人になってから名古屋に移住したんですけど、その時に経験した「人の怖さ」みたいなものに対してずっと敏感な時期が続いてて、そういうものを感じながら社会人1〜2年目の時期を過ごしていました。
今の石川さんからは想像できないですね。
特に社会人1~2年目の時期は、大通りとかでたくさん人がいるところ行くと 「ちょっとしんどいな….」みたいな感じになる事が多くて。
当時は名古屋のIT関連会社に勤めていて、そこで自動車関連の会社のシステム開発などに従事していました。
仕事に打ち込んでいく中で、当然成果とかも出てきて、仕事の面白さや楽しさみたいなものに夢中になっていき、徐々にそういったものは感じなくなっていったんですよね。
自動車関連の会社のシステム開発の仕事とは、具体的にはどのようなことをされていたのですか?
自動車の製造工場のメンテナンスシステムや火力管理、製造管理システムの開発であったり、プログラミングとかネットワーク構築といったことを主におこなっていました。
生産システム構築ソフトウェアに VDS というものがあるんですが、そういったものに日々触れていましたね。
今の仕事とはまったく違いますね。そこからどのように今の仕事に繋がっていくのでしょうか。
当時、仕事自体はすごく楽しかったんですけど、ずっと「今の仕事を続けるかどうか」ですごく悩んでいたんですよね。
つまり「ずっと自動車の製造工場関連に特化したエンジニアとして仕事をやり続けるのかどうか」であったり、これからの長い人生を考えた時に「エンジニア(をやり続けるべき)ではないんじゃないか?」みたいなことを悶々と考えていました。
仕事で成果が出て褒められたりとかすることもあったんだけど、「仕事を好きかどうか?」と聞かれると、ちょっと「うーん」っていうところが正直あってですね。
ある時に「自分の経験を活かしつつ、何か好きになれる仕事はないか」と思い色々と調べていたところ「Web 系のプログラミング」の存在を、その時初めて知りました。
はい。
製造管理とか、そういう領域だけで今まで自分はシステムを作っていたけど、「Webの世界でもそういったものが作れるんだ」みたいな事を気づかされて、「Web プログラミングって面白いな」となり、そこから Web のことを調べていくうちに Web マーケティングの存在を知ったんですよね。
すると Web マーケティングの方にすごく興味が湧いてきて(笑)
(爆笑)
その時に Web マーケティングのセミナーが東京で開かれることを知って、当時自腹で参加しました。
そしたらそのセミナーの登壇者の1人に、滝井さんがいたんですよね。
そこで最初の接点ができるんですね。
そうです。セミナーを実際に受けて話を聞いてみたら、滝井さんの話もとても面白くて。それがきっかけでリスティング広告に興味を持ったんですよね。
名古屋に帰ってから何冊かリスティング広告関連の書籍を読んだりもしていたんですけど、「そういえば滝井さんと名刺交換していたな」と思って、調べてみたら当時滝井さんが研究会(リスティング広告の勉強会)をされていることを知って。
東銀座移転前の、西新宿時代のキーワードマーケティング研究所時代の話ですかね。
はい。そこに僕も会員として入会して、研究会員として勉強するようになったんですよね。
そして結構決定的だったのが、現キーワードマーケティングの顧問である松田さんが「リスティング広告を体系的に教える」みたいな講座を当時手掛けていて、それを受講した時のことだったんですけど、もう単純になんか「すごいな」と思って。
「すごいな」とは?
講座自体から感じられる熱気もすごかったし、「僕もこういう人たちと仕事がしたい」となってしまって。
最初にセミナーを受けてから2~3年ぐらいは経過していたと思うんですけど、その講座を受講したわりとすぐ後に、当時のキーワードマーケティング研究所(現・キーワードマーケティング)に中途入社しました。当時はまだ6名の小規模な組織でした。
養成講座を手掛けられるようになるまで
キーワードマーケティング中途入社されて、徐々に養成講座を手掛けられるようになっていかれたと思うんですけど、もともとは滝井さん、松田さんが手掛けられていましたよね。
徐々に石川さんにスイッチしていったと思うんですけど、経緯をお伺いしたいです。
例えば現在養成講座って全25回でおこなっているんですけど、当時は全10回とかだったんですよ。
それで当時のアカウント構築は管理画面を操作する側面も当然ありつつ、CSV を使っていくところが大きくて。
だから当時講座の初回では、そういった CSV の操作方法とか、「どう扱えば効率的にアカウント構築できるのか」とかをメインで教えていたんですよね。
前職でエンジニアということもあってテクニカルな部分は強かったし、もともと研究会員として受講していて内容を知っていたので、すぐ「やってみる?」と滝井さんに言われて。
あ、結構初期から講座には携わっていたんですね。
そうですね。分担して講座をする形で、中途入社した直後ぐらいからかなりやっていました。
例えば全10回のうち、テクニカルな部分を僕がやるみたいな形で。
そもそもの話にはなるのですが、石川さんのお仕事って大部分は講師業だと思うんですけど、もともと人前で話したり、人に物事を教えたりするのって好きだったり、得意だったりしたんですか?
いやまったく(笑)
(笑)
正直エンジニア時代も、お客さんに何かを説明するってすごく苦手だったんですよね。
でもそれが今では過去の受講生含め、とんでもない数の方に対して講座を提供されるようになっているわけですよね。
それはなぜなのでしょうか?
単純に「広告やマーケティングが好き」「自分が学んだことを誰かに伝えたい」という想いが大きく、「苦手」意識をはるかに上回ったからだと思うんですよね。本当に、シンプルにそれだけだと思います。
養成講座事業で苦労するところ
養成講座をやられる中で、大変に感じる点や「難しいな」と思う点はありますでしょうか?
一番難しいなと思うのは、「講座を作り上げるまで」ですね。
非常にごちゃごちゃしてることを整理して、体系化していき「どう伝えていくか?」みたいなところが一番苦しいです。
ただ苦しいが故にやりがいというか、面白みもあるみたいなものもあるんですよね。完成しちゃうとあとはもうそれを伝えるだけって形になるので。
もちろん伝え方や伝える中での試行錯誤、工夫する余地も結構あるんですけど、やっぱり自分は前者に、面白さというか体系化して作り上げていくプロセスに難しさと面白さを感じますね。
具体的にどんな試行錯誤が行われているんでしょう?
まずは自分がその講座の中で伝えたいと思うことを、ひたすらすべてアウトプットしていく。そしてそれをどうやって伝えていくと、分かりやすく、学びやすくて実践しやすいかをひたすら考えていく。それが基本。
そのうえで、それらをマインドマップ上で整理していって体系化して資料などに落とし込んでいきます。
石川さんはすごく簡略化して説明されたと思うんですけど(笑)
その作業って実際におこなうとなると、色々大変だと思うんですよね。
しかもそこにいくら工数をかけたとしても、実際に講座を受講される方からすると、まったく見えない部分ですよね。あと他の仕事も含めて、石川さんの働きぶりを見ていると、とてもストイックにお仕事に取り組まれているようにも見えます。
モチベーション源って何なんでしょう?
まずベースにある考えとして、「とにかく学んで実践できないと意味がない」というのが根底にあります。
講座を実際に受講される方のほとんどは初心者なので、ちゃんと理解ができてアクションがあるかどうかという点はとても大切にしています。
そのため、頑張っていたとしても「その頑張りに気づいてほしい」という感じは一切なくて、自然と「とにかく学んで実践できないと意味がない」から必死に作らざるを得ないという感じです。
逆に僕が頑張って作っているというところには気づいて欲しくなくて、なぜかというと…
受講生には講座そのものに没入して欲しいからですか。
そうですね。多分そこってエンタメ全般そうかなと思うんですけど、 裏ではすごい苦労していたとしても、それを見せないですよね。
僕は「自分が人より優れてるところを挙げなさい」と言われたら正直すぐ出ないんだけど、ただなんか「クライアントさんとかお客さんのために何か良いものを作るという、その思いの純度だけは誰にも負けない」という思いが強くあって、その思いをもとに、日々仕事には取り組んでいますね。
ありがとうございます。仕事に真摯に向き合う姿勢、色々と考えさせられます。
なぜ新規事業として「アドむすび」をはじめるのか?
石川さんは今の事業に情熱を持って取り組まれてると思うのですが、率直に今やられている事業に加えて、新規事業に着手される理由って何なんでしょう?
今回フリーランスの広告運用者と事業会社のマッチングサービス「アドむすび」を立ち上げるというお話ですが。
まず大前提として、今の市場環境からすると取り組む価値が大いにある事だと思っていて。まず実際に養成講座、インハウス支援事業に携わる中で、事業会社側からは「広告運用ができる人の採用が難しい」という話をすごくよく耳にしていて、あと人件費と採用費も上がってるので、なかなか取り組みがいのある課題だと思っています。
あとフリーランスの広告運用者もですけど、これは今すごく増えていて働き方も変わってきている。ただ運用型広告に特化した人と企業のマッチングサービスというのがまだないので、それで「やってみようか」という話になり、取り組み始めました。
実際弊社の養成講座を過去受講していて、そのあと自分で運用することがだんだん年齢とともに難しくなってしまったり、事業規模が大きくなって弊社で運用というケースはあったかと思います。
ただ条件面で弊社側で受け入れが難しかったりしていたケースも大いにあると思うので、そういった仕事とのマッチングだけでも相当な数がありそうですよね。
そうですね。そういったユニークな要素も、今後事業を伸ばしていく上では大きく寄与してくれるのかなと思います。
他マッチングサービスとの違い
他に何かユニークな要素や、他のマッチングサービスと比べた際の、アドむすび特有の特徴ってあったりしますでしょうか?
これは個人の感想ですが、マーケターに特化したマッチングサービスなど、類似競合も多く、すでに市場はレッドオーシャンのようにも思っていて、相当な要素がないと厳しいように思います。
まだ構想段階のものもあるのですが、複数あります。
まずは既存の講座に加えて、登録されたフリーランスの方向けの講座を用意し、フリーランスの方が中長期的に安定して学べる環境を用意しようと考えています。
フリーランスの方向けの講座ですか?
確かに、知り合いのフリーランスで広告運用をされている方と話をすると「仕事でフィードバックがもらえないから成長している気がしなくて危機感がある」とか「情報収集しにくい」みたいな話をよく耳にします。
そういった点を受講するとカバーできるような講座を用意する…ということでしょうか。
そうですね。
結局事業会社とフリーランスをマッチングさせて仕事をこなしていく…みたいなマッチングサービスはすでにあるけど、やっぱりマッチングサービスとしてちゃんと育てていくのであれば、運用者のレベルをしっかりとあげて「あそこでマッチングした人、すごく仕事ができていいね」という風にしていかないといけないところがあると思っています。
あとこれは実際に事業会社の方からも、フリーランスの方からも相談を受けるんですけど、コミュニケーションや、やり取りに苦手意識を持っている方も一定数いらっしゃるんです。
会社によってはずっと運用だけやっていればよかったものが、独立するとそうはいかず…というケースもあるでしょうし、人によりけりだとは思いますが、確かにそういったケースも一定あるかもしれませんね。
コミュニケーション能力が高い人ももちろんいるけど、そういう人の中には成果面を冷静に見てみると「うーん…」という方もいる。
でも事業会社の人はそういう人の方がやり取りしやすかったりするから、仕事を依頼してしまうケースもある。
はい。
それって非常に勿体無くて、そういったものをちょっと上から目線な言い方をしてしまうと最適化させていきたいです。
例えば登録しているフリーランスの広告運用者の方に、クライアントさんとのコミュニケーションの取り方の講座を提供したり、希望に応じて毎月出しているレポートの添削をしてあげたり。
至れり尽くせりですね(笑)
あと自分自身が運用者としての経験も事業を手掛けてきた経験もあるので、広告運用者の方や事業会社に対しても、「もしお互い納得がいかないことがあれば、自分がセカンドオピニオンとして相談に乗りますよ」と声かけができます。
それは強力ですね。ちなみにフリーランスの広告運用者として登録するには何か資格であったりが必要なんでしょうか。
特に何か特定の商材を購入してもらう必要はなくて、職務経歴を出してもらって面談をするだけですね。
面談の中でこれまでの経験などををヒアリングして、最適な案件があればご連絡してお願いしていく感じです。
個人で広告運用をされていて興味がある方はこちら
最後に
最後に、石川さんはすでにキーワードマーケティングに在籍されて丸12年。自分は今年の2月で丸9年になると思うんですけど、当時6人で構成されていた組織は70名以上の規模になり、さらには支社が出来たりといった動きもこの数年の中でありました。
昔に比べて「ここは結構変わった」とか、いい点も悪い点もあるかもしれないですけど、お伺いできればなと思うんですがいかがでしょう。
「変わった」で言うと、これは仕方ないかもしれないけど、組織化されていったので、かなりルールは整備されましたよね。
「本当、組織になったな」としみじみと思います。6人ぐらいの時って本当に自由だったんで、 昼ぐらいに出社して、まず昼寝して、そこから働き始めて深夜に帰宅するみたいな。
そんな自由な時代があったんですね(笑)
ただその頃から変わっていないところもあって、この会社のいいところって「良い人しかいない」だと思うんですよね。
ああ、それは僕も外部の人からよく言われます。
「スタッフページ見ましたけど、キーマケさんって本当に優しそうな人しかいないですよね」とか。
そうなんですよね。これ僕の性格とかもあるんだけど、あんまりオラオラ系というか、野心がギラギラしている感じの人と合わないので(苦笑)
わかります。僕もそういう人の多い会社だったら定着しなかったと思います(笑)
組織が大きくなる中で当然ルールや仕組みが進んでいくけど、そういう「人の良さ」みたいなものは残しつつ、100名体制とか、あるいはその上に突き進んでいけたらいいんじゃないかと思っています。
あとそういった要素をマッチングサービス内にも持ち込みたいです。
「あそこでマッチングする広告運用者はみんないい人ばっかりだね」ってなるようになっていくといいんじゃないかと。
確かに。広告運用ってその会社の事業と深く関わるから、運用者の人間性みたいなものも本来とても大事にされるべきですよね。今後がますます楽しみですね。今日はありがとうございました。
はい。こちらこそ、ありがとうございました。
執筆・編集・企画・インタビュアー:川手 遼一
インタビュー協力:石川優二
撮影:コウノタカユキ(Taka)