日本国内での月間利用者が7,000万人を超える動画サイトである YouTube1。
近年、YouTube を活用した販促やマーケティング活動の重要性が高まる中、YouTube を主要な販売チャネルとする企業や個人も増加し、その影響力がますます拡大しています。
これにより、多方面からの関心が集まり、さらなる成長の可能性が期待されています。
そんなYouTubeですが、動画を見ている際に「プロモーションを含みます」という表示を目にしたことはありませんか?

キーマケLab のアンケート調査によると、YouTube でプロモーションを含む動画を見たことがない人はわずか5.7%という結果が出ており2、この数値からも、この表示が多くの人の目に触れるようになってきていることが感じ取れるのではないでしょうか。
結論から申し上げると、この表示は動画の内容が企業や団体などの第三者から報酬(金銭・商品提供など)などの対価を受け取り、特定の商品・サービスを宣伝する目的の動画として投稿したコンテンツを示すものです。
本記事では、この表示の意味や背景、そして設定方法やメリット・デメリットを詳しく解説していきます。
YouTubeの「プロモーションを含みます」が表示される意味
YouTube において、冒頭あるいは動画視聴開始直後の10秒間「プロモーションを含みます」というテロップが表示されることがあります。
前述した通り、この表示は動画投稿者が企業や団体などの第三者から報酬(金銭・商品提供など)などの対価を受け取り、特定の商品・サービスを宣伝する目的の動画として投稿したコンテンツであることを意味しています。
こういったコンテンツ(動画)のことを、YouTube は「有料プロダクト プレースメント」と呼んでおり、YouTube の公式ヘルプで以下のように定義されています。
有料プロダクト プレースメントとは、対価を得て第三者のために作成され、なおかつ、第三者のブランド、メッセージ、または商品が直接内容に含まれているコンテンツのことです。
引用元:有料プロダクト プレースメント、スポンサーシップ、おすすめ情報を追加する – YouTube ヘルプ
こういった表示を動画に差し込むことにより、視聴者はこの動画が広告目的を含んでいることを認識しやすくなります。
YouTubeに「プロモーションを含みます」の表示は投稿者による任意の設定によるもの
「プロモーションを含みます」という表示は、YouTube が動画の内容を自動的に判別して、表示しているわけではありません。
この表示は、動画投稿者が YouTube Studio の「有料プロモーション」設定でチェックを入れることにより、表示される仕組みになっています。
したがって、自身の動画から「プロモーションを含みます」のテロップを消す場合には、上記の設定をオフにすることで表示と非表示を切り替えることができます。
詳しい設定方法は YouTube に「プロモーションを含みます」を表示する設定方法 にて解説していますので、そちらをご参照ください。
YouTubeに「プロモーションを含みます」が表示されるようになった背景
全部で2つあります。
背景その1.YouTuberとのタイアップ市場が拡大!プロモーション案件を依頼する企業数は4,000社以上
プロモーションを含む動画を多く見かけるようになったのは、拡散力の高い YouTuber の動画を通して、企業の商品やサービスの認知を広げるタイアッププロモーションが増えているのが要因の1つと言えます。
YouTube チャンネル運用サービスや YouTube データ分析ツールを提供する株式会社エビリーの調査によると、2023年1月から12月までの間に YouTuberとのタイアップ案件を依頼した企業数は4,261社にのぼると報告されています。

こうした急激な市場の成長に伴い、視聴者がタイアップと通常投稿の境界を明確に認識できるように、YouTube 側が「プロモーションを含みます」の表示を導入したと考えられます。
背景その2.景品表示法の改正によるステルスマーケティング対策による影響
YouTube での プロモーション 案件が増加する一方で、2023年10月1日から施行された景品表示法第5条3号(その他、誤認されるおそれのある表示)により、「ステルスマーケティング」が不当表示であると指定されました3。
ステルスマーケティングとは、企業が自らまたは第三者に依頼して、消費者に商品やサービスの宣伝と気づかれ
ないように宣伝行為をすることのことです4。
法律の改正により、企業側は第三者へ依頼して行う YouTube の プロモーション動画でも、視聴者に広告であることを示す必要が出てきました。そのため「プロモーションを含みます」という表示も、より一般的に見かけるようになったと考えられます。
YouTubeに「プロモーションを含みます」を表示する判断基準
投稿するYouTube動画において「プロモーションを含みます」と表示させるべきかは、景品表示法やステルスマーケティングについて深く理解する必要があります。
特に、YouTubeに投稿される動画の内容が景品表示法の「事業者の表示」に該当するかは、判断する上で押さえておきたいポイントです。
事業者の表示:事業者の自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示のこと
ここでは、消費者庁が公開している「景品表示法とステルスマーケティング~事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブック~」と「ステルスマーケティングに関するQ&A」からポイントを解説していきます。
以降、景品表示法(ステルスマーケティング)に関する法律関連の記述が続きます。
本記事におけるステルスマーケティングに関する記述はあくまで情報提供を目的に作成されており、法的助言、推奨を目的とするものではございません。
実際の YouTube の設定や動画制作の依頼などについては、専門家の助言のもと読者様ご自身の責任で実施をお願いいたします。
また今回、本記事内で言及されている事例はすべて日本国内における事例をもとに解説しており、海外の法制度や運用とは異なる場合があります。したがって、海外向けの広告やプロモーションを検討されている場合は、各国の法規制を十分に確認し、必要に応じて専門家の助言を受けることを推奨いたします。
なお、本記事の内容は公開時点の情報に基づいており、今後の法改正や行政機関の見解の変更により、適用されるルールが変わる可能性があります。常に最新の情報を確認し、適切な対応を行うようご注意ください。
ポイント1.動画の内容への関与度
一般的に、動画を依頼する会社が動画の内容を直接指示する場合や、間接的にコントロールしている場合は「事業者の表示」に該当します。
例えば、広告主が動画のシナリオを指示したり、テンプレート使用を強制したりする場合が該当します。
客観的にみて、動画投稿者の自主的な意思による投稿と判断できない場合は、事業者の表示に該当するため、当該動画が広告である旨を表示する(プロモーションを含みますと表示する)必要があります。
ポイント2.広告主と動画制作者の関係性・対価の有無
広告主が金銭だけでなく、無償での商品提供や特別なサービスなど、何らかの対価を提供している場合、その内容や目的によっては「事業者の表示」となる可能性が高まります。
また、過去の取引関係や将来的な取引の可能性など、広告主と動画投稿者の間に特別な関係性がある場合も、同様に「事業者の表示」と判断される要因となります。
特に注意が必要なのは、無償で商品を提供し「感想を投稿してほしい」と依頼するケースです。この場合、その後のやり取りや関係性によっては動画投稿者の動画が「事業者の表示」とみなされることがあります。
そのため、動画に「プロモーションを含みます」と表示されるように設定すべきかどうかの判断が難しくなります。
ポイント3.動画投稿者の自主的な意思の有無
投稿者が、自発的に商品やサービスを評価・推奨する内容の動画の場合は「事業者の表示」には該当しません。
ただし、企業から具体的な指示があったり、企業が第三者の意見を恣意的に抽出・編集したりする場合は事業者の表示に該当します。
また、投稿者の自由意志によって投稿された動画に対し、自社の都合のよい内容に改めるよう修正を求めた場合は、修正後の投稿動画が「事業者の表示」に該当する可能性があります。
そのような修正が行われた場合は、当該動画が広告である旨を表示する(プロモーションを含みますと表示する)必要があります。
YouTubeの「プロモーションを含みます」を表示するか迷う場合の具体例
YouTube 動画で「プロモーションを含みます」を表示すべきかどうか迷うケースは多いものです。特に、企業からの有料プロモーション案件と投稿者本人の自由意志によるレビュー動画の線引きは、判断が難しい場合もあるでしょう。
ここからは消費者庁の Q&A を参考に、具体的な例をあげながら「プロモーションを含みます」の表示が必要な場合と、そうではない場合の具体例を解説していきます。
動画に「プロモーションを含みます」を表示した方がよい場合
- YouTuber Aさんは、企業B社から報酬を受け取り、令和5年10月1日以前に商品のPR動画を制作・投稿したものの、現在も動画を公開している場合は、その動画に「プロモーションを含みます」の表示を設定した方がよいのでしょうか?
-
景品表示法の改正前に投稿された動画であっても、現在も公開されている場合は「事業者の表示」であることが明瞭になっていなければ、告示違反となる可能性があります。
依頼主から広告である旨の明示を依頼された場合、対応が必要ですので動画に「プロモーションを含みます」と表示させましょう。
- YouTuber Cさんが、企業D社から商品を無償提供され、企業側から「よろしければ使用後の感想を動画で紹介してください」と依頼を受け、その後動画を制作・投稿した場合は「プロモーションを含みます」の表示を設定した方がよいのでしょうか?
-
このようなケースでは、企業とYouTuber間の取引関係や無償提供の内容など、個別具体的な事情によっては、YouTuberの自主的な意思による表示内容とは認められず、「事業者の表示」と判断される場合があります。
動画の内容を決定する際に、企業からの意向が強く反映されている場合は、特に注意が必要です。
企業側に確認の上、動画に「プロモーションを含みます」と表示させるか相談しましょう。
動画に「プロモーションを含みます」を表示しなくてもよい場合
- YouTuber Eさんが、企業F社の製品を個人的に気に入り、商品のレビュー動画を制作・投稿した場合は、その動画に「プロモーションを含みます」の表示を設定する必要があるのでしょうか?
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この動画は、YouTuber自身の自主的な意思によるものであり、「事業者の表示」には該当しないため「プロモーションを含みます」の表示は必要ありません。ただし、あくまで個人的な感想や評価を発信していることが前提です。
- YouTuber Gさんが、企業H社の製品Xを以前から愛用しており、自身のチャンネルでレビュー動画を公開していました。その後、企業H社から製品Xを無償提供され「今後もよろしければ動画を投稿してください」と伝えられたものの、YouTuber自身の意思で動画を制作・投稿した場合は、その動画に「プロモーションを含みます」の表示を設定する必要があるのでしょうか?
-
このケースでは、YouTuberがもともと商品を気に入っており、自主的に投稿しようと思っていたのであれば、「プロモーションを含みます」の表示は必要ありません。
ただし、企業との取引関係や無償提供の内容によっては「事業者の表示」と判断される場合もあるため、注意が必要です。
YouTubeの「プロモーションを含みます」を表示するメリット・デメリット
「プロモーションを含みます」の表示は、動画をみる側と投稿する側、そして企業側にそれぞれメリットとデメリットがあります。
立場 | メリット | デメリット |
---|---|---|
視聴者 | ・プロモーションであることが分かり、透明性が確保される | ・プロモーション動画と分かることで、興味が持てなくなる可能性がある(キーマケLabのアンケート調査結果によれば、全体の4割が「プロモーションを含みます」の表示がある動画に関して、購買意欲が「下がる」「少し下がる」と回答) |
動画投稿者 | ・依頼されたプロモーション動画と自主制作のレビュー動画の区別がつき、信頼性が高まる ・YouTubeの規約や広告に関する法令に準拠した運用ができる | ・プロモーション動画であることが視聴者に伝わり、視聴者が内容を敬遠して再生回数が落ちる可能性がある ・クリエイターのファンがネガティブな印象を持つ可能性がある ・YouTube Kids に動画が投稿されなくなる |
企業 | ・動画内で宣伝する商品やサービスと、動画に挿入されるYouTube広告で取り扱う内容などが競合しないように調整される | ・プロモーション動画であることが視聴者に知られてしまう ・動画投稿者やプロモーション内容が視聴者に不評の場合、企業イメージが損なわれる可能性がある |
特に、有料プロモーションの設定を行うと、動画の中で紹介される商品・サービスと競合する広告が、YouTube広告として挿入されないよう広告の置き換えを行ってくれるという点は、特筆すべきメリットの1つです。
ただその一方、「プロモーションを含みます」と表示された動画は広告であることが分かることにより、一部のユーザーの購買意欲が低下するといった点はデメリットとも言えるでしょう。
キーマケLab が20代〜70代の男女922名に行った調査では、プロモーションを含む動画を見た際の購買意欲は「変わらない」と答えた人が約6割と、最も多い結果となりました。
ただその一方、全体の4割が「プロモーションを含みます」の表示がある動画に関して、購買意欲が「下がる」「少し下がる」と低下する旨を回答しています。
「プロモーションを含みます」という表示や広告そのものに対して強烈な拒否感を持ってしまう人が一定存在するため、これらの数値への影響は避けることは困難です。
ただし、これはタイアップ動画全般に言えることですが、企業側の監修が入ることや制作費を調達できることもあり、通常の動画に比べてクオリティの高いものを視聴者は楽しむことができるようになるなどのメリットも存在します5。
そのため、視聴者にとって違和感なく受け入れられるようなタイアップ動画を制作することが、クリエイターにとっても企業にとっても、より良いプロモーション活動を行なっていく上で必要不可欠となるでしょう。
YouTubeに「プロモーションを含みます」を表示する設定方法
実際にYouTube動画に「プロモーションを含みます」と表示させるには、以下の手順で設定を行います。
パソコンで YouTube Studio にログインし、左側のセクションから [コンテンツ] を選択します。

その後、編集する動画をクリックします。

編集する動画の設定項目を全て表示し、有料プロモーションの設定を表示します。

[私の動画には、プロダクト プレースメント、スポンサーシップ、おすすめ情報などの有料プロモーションが含まれています] の横にあるチェックボックスをオンにします。

最後に[保存]ボタンを選択し、設定内容を保存します。

設定はすぐに反映されます。
YouTube で動画を開いて、左上に「プロモーションを含みます」とテロップが表示されることを確認しましょう。
まとめ
YouTubeの「プロモーションを含みます」という表示は、企業や団体、あるいは個人から報酬を受け取り制作された、宣伝要素を含む動画であることを、動画投稿者が示す表示です。
視聴者に対して動画が広告であることを明確にし、透明性を高める上で重要な役割を果たしているといえるでしょう。
視聴者をはじめ、動画投稿者やプロモーションを依頼する企業それぞれにメリット・デメリットはありますが、キーマケLabの調査が示すように、この表示による視聴者の反応はおおむね中立的です。
YouTubeへの動画投稿やチャンネル運営、YouTuberへのプロモーション依頼を行う上では、本日紹介した景品表示法を理解の上、有料プロモーションの適切な表示を心がけましょう。
本記事で一部紹介したYouTubeの「プロモーションを含みます」に対する理解や購買意欲に与える影響調査の結果は、こちらから詳細を確認できますので、あわせてご覧ください。

- YouTube 視聴はより多様に、YouTube の最新動向と利用実態
https://www.thinkwithgoogle.com/intl/ja-jp/marketing-strategies/video/youtube-recap2023-2/ ↩︎ - YouTubeの「プロモーションを含みます」に対する理解や購買意欲に与える影響に関するアンケート結果
https://kwmlabo.com/survey_results/4416/#index_id2 ↩︎ - 景品表示法 | 消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/ ↩︎ - 「消費者庁 第4回 ステルスマーケティングに関する検討会 資料 2022年(令和4年)10月6日 インターネット広告におけるガイドライン等の取り組みとステルスマーケティング対策に関する考え方について」https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/meeting_materials/assets/representation_cms216_221006_02.pdf ↩︎
- 配信内における narumi 氏の発言参照
1019 PR記事がむしろ好き – 楽しいラジオ「ドングリFM」 | Podcast on Spotify
https://open.spotify.com/episode/0MFDuc0E6768MGMrpwW3MA ↩︎