SaaS(Software as a Service)とは、インターネットを通じてソフトウェアを提供するサービス形態のことです。
株式会社富士キメラ総研の調査によると、日本国内の SaaS 市場規模はすでに1兆4,128億円(2023年度見込み)ほどまでに成長しており、2027年度(見込み)には2兆円を超える成長見込みであると発表しています1。
海外市場においては生成 AI の登場などにより「SaaS is Dead」2などの、やや過激ともとれる議論も広まる昨今ですが、それでも市場は成長し続けており、結果 SaaS 市場にたずさわる方も増え続けていくことが想定されます。
一方、SaaS ビジネスに携わるようになり、SaaS ビジネス特有の用語を学ぶ必要に迫られている方も多いのではないでしょうか。
しかし、「ARR」や「Churn Rate」といった独特な用語が数多く登場するため理解が追いつかないほか、「SQL」や「Runway」のように同じ単語でありながら、SaaS 分野では全く異なる意味を持つ場合の解釈に苦労するケースも多く、つい混乱してしまう…という方も多いはずです。
実は、僕もそのひとりでした。
不勉強ゆえ、特にSaaSの広告運用をするようになった初期はパっと専門用語を言われた際に意味を理解できず、都度調べ覚えるようにしていました。
でも、その学び方だと効率悪いですよね。
そこで今回は、SaaS事業に精通したライターのこばやしさん@koba_iju にお願いし、SaaS事業を運営する立場の方はもちろん、外部パートナーなどの立場で支援する側の方も知っておくと助かるような用語をまとめてもらいました。
SaaSビジネスに携わるなら、業界用語の理解は欠かせません。
いくつも用語が登場するため、本記事では用語の関係性も合わせて整理し、具体例を交えながら解説していきます。
SaaSの基礎用語
SaaSは、その用途(ホリゾンタル)や対象とする業界(バーティカル)によって大きく2つに分類されます。
Horizontal SaaS(ホリゾンタル SaaS)
Horizontal(ホリゾンタル)とは「水平の」という意味があり、業界や業種を問わず、広く利用されるSaaSのことを指します。
人事や会計、営業のような業界に限らず存在する部門や、メール・会議などの汎用的な業務の課題を解決するSaaSです。
クラウド型会計システム、営業支援システム(SFA)、採用管理システム(ATS)
Vertical SaaS(バーティカル SaaS)
Vertical(バーティカル)は「垂直の」という意味で、特定の業界や業種に特化したSaaSを指します。その業界特有の課題を解決するような機能を持ち合わせているSaaSです。
具体例:医療業界の電子カルテシステム、飲食店向けのクラウドレジシステム
収益・成長度に関するSaaS用語
SaaSは、お客様が定期的に利用料を支払い、サービスを継続的に使ってもらう「サブスクリプション型」のビジネスです。
売り上げや企業の成長を図る指標に関しての用語が登場するため、正しく理解しておきましょう。
MRR(Monthly Recurring Revenue)
MRR(エムアールアール)とは、月次経常収益を指します。
サブスクリプション型のビジネスモデルにおける重要な指標で、毎月継続的に得られる収益を表します。
年額プランによって将来的に受け取ることが決まった収益のことを、CMRR(Committed Monthly Recurring Revenue)と呼びます。
ARR(Annual Recurring Revenue)
ARR(エーアールアール)は、年間経常収益を指し、MRR(月次経常収益)を12倍した金額です。
企業の成長性を測る重要な指標として使われ、ランキング形式で掲載されることもあります。
・New MRR:新しい顧客からの経常収益
・Expansion MRR:アップグレードやクロスセルなど、既存顧客からの追加収益
・Downgrade MRR:ダウングレードによって失われた損失
・Churn MRR:解約によって失われた損失
ARR と MRR 、そして CMRR の関係性を図解したものが次の通りです。
Quick Ratio
Quick Ratio(クイックレート)は、SaaS企業の成長速度を測る指標です。
当座比率とも呼ばれており、一定期間内に増えたMRRと減ったMRRの比率を指します。
Quick Ratio=(New MRR+Expansion MRR) / (Churn MRR+Contraction MRR)
Quick Ratioの値は、SaaSの場合「4」を目安とするのが一般的です。この値が4以上であれば成長速度が早く、今後の成長が期待できることを意味します。
ARPA(Average Revenue Per Account)
ARPAは「アーパ」と呼び、アカウント(取引先や契約)ひとつ当たりの平均収益の指標です。
ARPA=合計売上高 / アカウント数
ARPA=10万円 / 5アカウント
ARPA=2万円
1アカウントで複数ユーザーが利用できる料金形態の場合、ARPAを用いて収益分析を行います。
ARPU(Average Revenue Per User)
ARPUは「アープ」と呼び、1ユーザー当たりの平均収益の指標です。
ARPU=合計売上高 / ユーザー数
ARPU=10万円 / 10人
ARPU=1万円
ユーザー数に応じて課金する料金形態の場合は、ARPUが収益分析に使用されます。
ざっくり「顧客単価」と分類されることも多い ARPA や ARPU ですが、ASP 含め、違いについてまとめて図解すると次のようになります。
ASP(Average Sales Price)
ASPは、新規顧客一人当たりの平均収益額です。
ARPUが1ユーザー当たりの平均収益額の全体を示しているのに対し、ASPは新規顧客からの収益が対象になっているのが違いです。
ASP=新規顧客からの売上金額(一定期間のNew MRR) / 一定期間の新規ユーザー数
ACV(Annual Contract Value)
ACVは、顧客一人当たりが支払う年間契約額を指します。年間経常収益であるARRに加えて、初期費用やオプション費用も含みます。
契約を基にした確度の高い収益状況を捉えており、自社サービスの契約状況を把握する時に使用します。
TCV(Total Contract Value)
TCVは、顧客一人当たりが支払う合計契約金額です。契約期間が続くほど、TCVは高くなります。ACVが1年間であるのに対し、TCVは契約から解約までの期間すべての金額が含まれます。
継続性に関するSaaS用語
SaaSは、継続的な収益を生むビジネスのため、解約やプランのダウングレードは将来の収益予測に直接影響します。解約率や定着率などの指標に関する用語を理解しておきましょう。
Churn Rate
Churn Rate(チャーンレート)は「解約率」のことを指し、全体の顧客数に対する解約の割合を示します。
「Churn」には解約の意味があり、サブスクリプション型のビジネスモデルであるSaaSの場合、解約率は重要な指標の1つです。
Churn Rateは、大きく以下の2種類あります。
Customer Churn Rate(カスタマーチャーンレート)
顧客数を基準にした解約率。一定期間における解約した顧客の割合を示します。
Customer Churn Rate=(当月解約した顧客数 / 前月末の顧客数) ×100
Revenue Churn Rate(レベニューチャーンレート)
損失額や収益の増減額を軸に算出されるレベニューチャーンレートは、以下の2種類があります。
・Gross Churn Rate(グロスチャーンレート)
一定期間の収益のうち、解約やプランのダウングレードによる損失額の割合を示します。
Gross Churn Rate=(当月の損失額 / 前月末の経常利益)×100
・Net Revenue Churn Rate(ネットレベニューチャーンレート)
一定期間の収益のうち、解約やプランのダウングレードによる損失額と、既存顧客のアップグレードやクロスセルによる増収額を合わせた金額の割合を示します。
なお、ここには、新規顧客からの収益は含みません。
Net Revenue Churn Rate=(当月の損失額 – 増収額) / 前月末の経常収益 ×100
事例のように、ネットレベニューチャーンレートがマイナスの値になることを「Negative Churn(ネガティブチャーン)」と呼びます。
この状態は解約やダウングレードによる損失額よりも、既存顧客のアップグレードやクロスセルによる増収額が上回っているため、事業が成長傾向と言えます。
下記図は、Churn Rate(解約率)について、わかりやすく理解するために、例として架空の SaaS プロダクト(クラウド型会計システム)をベースに、図解したものになります。
CRR(Customer Retention Rate)顧客維持率
CRRは顧客維持率のことを指します。顧客が一定期間でどのくらい継続利用しているかを示す指標です。
CRR=(前月から継続している顧客数 / 前月末の顧客数) ×100
(継続利用者4,500人 / 前月利用者 5,000人) ×100 =90%
NRR(Net Revenue Retention)
NRRは、売上維持率のことを指します。顧客数を基にしたCRRに対し、NRRは既存顧客による売上の割合を示す指標です。NRRが100%以上あれば、安定している運営状態と言えます。
NRR=(継続利用の顧客の売上 / 前月末の売上) ×100
(今月の売上510万円 / 前月の売上 500万円) × 100 =102%
Customer Success(カスタマーサクセス)
カスタマーサクセスとは「顧客の成功体験」を意味しており、顧客が自社のサービスを利用して目標や期待する成果を達成できるよう支援する取り組みを指します。
SaaSビジネスは、継続的に商品・サービスを利用してもらうことで安定的な収益につながるため、上記の取り組みが重要視されています。
NPS(Net Promoter Score)
NPS(ネットプロモータースコア)は「顧客推奨度」のことを指します。顧客がどのくらい商品やサービスに愛着を持ち、他人に薦めたいと思うかを見える化した指標です。
11段階評価のアンケートを用いて測定し、回答内容を以下の3つに分類します。
(1)批判者(0~6点)
(2)中立者(7~8点)
(3)推奨者(9~10点)
これらの結果を用いて、下記計算を行うことで算出可能です。
NPS=(推奨者数-批判者数)/ 回答者総数×100
150人にアンケートを行い、推奨者が60名、批判者が30名の場合
NPS =( 60-30) / 150 × 100 = 20
RFV(Recency・Frequency・Volume)
RFV(アールエフブイ)とは、顧客の商品・サービスの利用状況や満足度を表す分析手法です。以下の3つの観点で分析し、活用しきれていない顧客へのアプローチ方法を検討する目的で利用されます。
- Recency(直近の利用状況)
- Frequency(利用頻度)
- Volume(利用量)
似た言葉にRFM (Recency・Frequency・Money)がありますが、これはVolume(利用量)ではなく利用金額(Money)を軸に分析する手法です。
RFM分析は高級ホテルやリゾート、高級車の販売など、富裕層向けのマーケティングアプローチを検討するのに利用されています。
AU(Active User)
AUとはアクティブユーザーのことを指し、自社の製品・サービスを積極的に活用している顧客のことを言います。
SaaSを利用しているAUを、以下のような観点で分析することもあります。
DAU(Daily Active User)
DAUとは、1日間にサービスを利用したアクティブユーザー数を指します。
WAU(Weekly Active User)
WAUとは、1週間にサービスを利用したアクティブユーザー数を指します。
MAU(Monthly Active User)
MAUとは、1カ月間にサービスを利用したアクティブユーザー数を指します。
スティッキネス(粘着度)
スティッキネスは、月間のアクティブユーザー数に占める1日単位で使うユーザー数の割合です。
スティッキネス=(DAU / MAU) × 100
高いスティッキネスは、ユーザーがサービスを頻繁に利用していることを意味し、エンゲージメントが高いと判断できます。
一方で低いスティッキネスは、サービスの利用頻度が低いことを意味しますが、必要時にのみ使われている可能性もあります。特定の月次作業に特化した業務用ツールなどの場合は、スティッキネスが低くてもユーザーが満足しているケースもあり得るのです。
採算性・効率性に関するSaaS用語
SaaSは継続的な収益を生むビジネスモデルですが、事業が成長して採算が合うかどうかをモニタリングする必要があります。採算性や事業の効率性を評価する用語も理解しておきましょう。
CAC(Customer Acquisition Cost)
CACは「顧客獲得単価」のことであり、一人または一社の顧客を獲得するためにかかるコストのことを言います。
CAC=広告費や営業活動費などの顧客獲得にかかった総コスト / 獲得顧客数
CACが高すぎると、顧客から得られる収益が顧客獲得コストを上回るまでに長い時間がかかり、収益性が低下してしまいます。収益モデルの健全性を確保するために、CACを抑えることが重要です。
CAC Payback Period(CACペイバックピリオド)
CACペイバックピリオドは、顧客獲得にかかったコスト(CAC)を回収するまでの期間を指します。1顧客当たりの平均売上金額は、1顧客当たりの月次経常収支(MRR)または、ARPU、ARPAを用いて算出します。
CAC Payback Period= CAC / (1顧客当たりの平均売上金額×売上総利益率)
CACが12万円、ARPUが5万円、売上総利益率12%
CAC Payback Period=12万円 / (5万円×12%)=20
この場合、CACの回収期間が20カ月かかることが分かります。
LTV(Life Time Value)
LTV(エルティーブイ)は「顧客生涯価値」を示す言葉です。1顧客が利用することによって将来受け取る対価の累積額のことを指します。
LTV = ARPA または ARPU × 平均継続期間
月間のARPUが2万円、平均継続期間が36カ月
LTV=2万円×36カ月=72万円
また LTV は SaaS 以外のビジネスモデルにおいても使用されることが多いうえ、計算方法がケースバイケースで異なります。
詳しくは下記記事でも詳細に言及されていますので、こちらもご参照ください。
LTV の算出方法は、商品の特性によってさまざまあります。サービスや商品タイプ、算出したい数値に合わせて参考にしてください。以下は一例です。
- LTV =平均購買単価 × 購買頻度 × 継続購買期間
- LTV =顧客の年間取引額 × 収益率 × 顧客の継続年数
- LTV =顧客の平均単価 × 粗利 ÷ 解約率
- LTV =顧客の平均購入単価 × 平均購入回数
新規顧客が増えたり購入単価が上がると、LTV は大きくなり、解約数が増えたりクーポンやセールなどの値引き施策をおこなうと LTV は小さくなります。また、継続年数や継続購入期間など、短期間では算出できない情報も必要になるため、正確な数値をすぐ計算しにくい指標でもあります。
「LTV(ライフタイムバリュー)とは。意味や計算方法、利益を最大化させる考え方を解説」より引用
Unit Economics(ユニットエコノミクス)
ユニットエコノミクスは、1顧客当たりの採算性や収益性を評価するための指標です。
ユニットエコノミクス= LTV / CAC
LTVが12万円、CACが3万円=4
SaaSビジネスでは、ユニットエコノミクスの値が3以上あると健全と言われており、ベンチャーキャピタルによる投資判断にも活用されています
下記図は、これら SaaS ビジネスの採算性を評価する上で重要な要素をまとめたものになります。
Burn Rate(バーンレート)
バーンレートは、企業が一定期間(通常は月単位)にかけたコストを指します。
SaaSビジネスは顧客基盤が成長するまで一定の資金投下が必要なため、資金が流出するペースを把握するために使われる指標の1つです。
Runway(ランウェイ)
ランウェイとは、手元資金が尽きるまでの期間のことです。
そのままでは、資金が尽きてしまう日のことを「ZCD=Zero Cash Date(ゼロキャッシュデイ)」とも呼びます。
ランウェイは「資金寿命」を示す重要な指標であり、新たな資金調達のタイミングを計るために使います。
ROI(Return On Investment)
ROIは「投資収益率」を指す言葉です。
投資した資金に対してどれだけのリターンが得られたかを示す指標で、事業活動の効果を測定する上で非常に重要です。
例えば、顧客獲得のためのマーケティング(広告やキャンペーン)で、投資効率の測定にROIが利用されています。
販売促進・営業活動に関するSaaS用語
SaaSビジネスでは、見込み顧客を獲得して商談を進める過程で専門的な用語が多く使われます。
リード獲得から成約までの各プロセスや、セールスチームの役割分担について理解することで、SaaSにおける営業活動の基本的な流れが把握しやすくなります。
Lead(リード)
リードは、自社の商品・サービスに興味を示している見込み顧客のことを指します。
BtoBマーケティングの分野ではよく使われている言葉です。顧客の検討段階に応じて以下のように分類されています。
MQL(Marketing Qualified Lead)
MQLは、マーケティング活動を通じて「関心が高い」と認定された見込み顧客を指します。
まだ具体的な商談の準備は整っていないものの、興味を持っていると判断される段階です。
一般的に、セミナー参加やホワイトペーパーのダウンロードなど、マーケティング施策に反応した見込み客がMQLに該当します。
SAL(Sales Accepted Lead)
SALは、マーケティング活動によって創出された見込み顧客(MQL)の中でも、より成約の可能性がある見込み顧客のことです。
商談機会を取りつけられた見込み顧客がSALに該当します。
SQL(Sales Qualified Lead)
SQLは、顧客のニーズが顕在しており、営業部門が受注の確度が高いと判断した見込み顧客のことを指します。
SALを営業部門が引き継いで商談を進めている見込み顧客が該当します。
また以下が、リードの種類をまとめたものになります。それぞれ分けて対応するケースも多いため、ひとくくりに「見込み顧客」といっても様々な種類が存在しておくことは、しっかりと理解しておきましょう。
Lead Generation(リードジェネレーション)
リードジェネレーションは、見込み顧客を獲得していくための取り組みや活動のことを指します。
CVR(Conversion Rate)
主にマーケティングにおいて、成約のことをConversion(CVと略すことが多い)と呼び、その成約率をCVRと示します。
Webサイト訪問者や広告をクリックしたユーザーが、どのくらい成果(お問い合わせや資料請求など)に達したか、その割合を示す指標です。
AE(Account Executive)
アカウントエグゼクティブは、新規顧客の獲得を目的にした営業担当者を指します。
受注の可能性が高い見込み顧客(SQL)へ商品・サービスの提案などを行い、クロージングを目指します。「AE」と略される場合もあります。
AM(Account Manager)
アカウントマネージャーは、契約締結後の顧客と関係性を構築し、ニーズの把握やフォローアップを行う営業担当者を指します。
SaaSビジネスでは解約を防ぐことが安定した運営につながるため、重要なポジションと言えるでしょう。「AM」と呼ぶ場合もあります。
インサイドセールス
インサイドセールスは、対面での営業ではなく、電話やメールなどのオンライン手段を使ってリードを管理し、商談を進める方法です。見込み顧客の興味・関心を高め、商談の機会を獲得してフィールドセールスにつなげる役割があります。
インサイドセールスの担当者は、以下のように大別できます。
SDR(Sales Development Representative)
SDRは、マーケティングによって創出した見込み顧客を、商談へとつなげる取り組みやその担当者を指します。
問い合わせや資料請求などがあった見込み顧客へ迅速に対応し、商品・サービスへの関心を高めます。
BDR(Business Development Representative)
BDRは、これまで接触できていない企業に対してアプローチし、リード獲得や商談を目指す取り組みやその担当者を指します。
新規開拓型のインサイドセールスとも言われており、主に大手企業へのアプローチで取り入れられることが多いです。
次の図は、それらの違いについて、わかりやすくするために図解したものです。
フィールドセールス
フィールドセールスは、顧客先に直接訪問して対面で行う営業手法のことを指します。
インサイドセールスから受注が見込めそうな顧客を引き継ぎ、商談やクロージングを担当します。
インバウンドセールス
インバウンドセールスは、見込み顧客に対して自社の商品・サービスの興味を高めてもらう営業です。
Webサイトやホワイトペーパーなどを活用して、見込み顧客からの問い合わせや資料請求を獲得する取り組みが該当します。
アウトバウンドセールス
アウトバウンドセールスは、見込み顧客に対してこちらから自社の商品・サービスを提案する営業です。
広告やテレアポ営業、展示会の出展などが該当します。
契約・サービス内容に関するSaaS用語
SaaSビジネスでは、サービスの品質や信頼性を確保するために、利用契約やサービス目標に関する用語が用いられます。
SLA(Service Level Agreement)
SLAは「サービスレベル保証」と訳されており、サービスの品質や信頼性についてサービス提供者(SaaS事業者)と利用者の間で合意する契約です。サービスの稼働率や応答時間、復旧目標などが明示されています。
月間稼働率99.95%を保証。ダウンタイムは月間で約21.6分の許容される。
SLO(Service Level Objective)
SLOは「サービスレベル目標」のことを指します。SaaS事業者と利用者が合意するSLAよりも厳しい目標値が設定されており、サービス利用者に開示されることは多くありません。
SLAを守るために、SaaS事業者の内部的な目標水準として設定されています。
月間稼働率99.99%を設定。ダウンタイムを月間で約4.32分まで許容する。
SLI(Service Level Indicator)
SLIは、「サービスレベル指標」のことを指します。SLOで設定された目標が達成されているかどうかを評価するための具体的な測定指標です。
一般的には、可用性、待機時間、スループット、エラー率などが上げられます。
前月のダウンタイムは13分で、月間稼働率は99.97%であった。SLAで定める月間稼働率99.95%(ダウンタイムは月間で約21.6分)を下回っていないため、問題なし。
その他
SaaSビジネスに携わるなら、成長戦略や市場規模の把握に役立つ用語も押さえておきましょう。
T2D3(ティーツーディースリー)
T2D3とは「Triple、Triple、Double、Double、Double」の略で、SaaS企業の急成長戦略を表す指標です。
初年度と2年目に売上を3倍(Triple)にし、その後の3年間は売上を2倍(Double)、すなわち5年で売上を72倍に成長するという目標を意味します。
Rule of 40%(ルール・オブ・フォーティー)
Rule of 40%は、成長率と利益率の合計が40%以上であれば、健全な成長を遂げているとされる指標です。高成長を目指しつつも、収益性も確保しているかを判断する際の目安としてSaaS企業でよく用いられます。
TAM・SAM・SOM
市場規模を分析する際に押さえておきたいのが以下の3つの用語です。
・TAM(Total Addressable Market):対象となる市場全体の規模を示し、事業が理論的に獲得し得る最大の市場価値を意味します。
・SAM(Serviceable Available Market):事業がターゲットにし得る市場規模のことを示し、TAMのうち実際にサービスを提供可能な市場の範囲を意味します。
・SOM(Serviceable Obtainable Market):SAMの中でも現実的に獲得できる市場規模を指します。実際にアプローチ可能で、一定の獲得が見込める規模の市場の範囲を意味します。
PMF(Product Market Fit)
PMFは、プロダクトと市場のニーズが合致し、顧客に受け入れられている状態を指します。SaaSビジネスにおいてPMFの達成は、ユーザーの獲得と継続的な収益、そして事業成長に欠かせないものと言えるでしょう。
【まとめ】SaaSビジネスに携わるなら押さえておきたい業界用語
本記事ではSaaSにまつわる事業運営やセールス、マーケティングなどの成果や状態を理解する上で欠かせない指標をはじめ、多数の用語が登場しました。
その中でも、以下の5つの用語は、SaaS事業の評価や業界理解に必要な用語となるので、略前含め必ず理解しておきましょう。
1.ARR:年間経常収益
2.ARPU:ユーザー当たりの平均収益
3.LTV:顧客生涯価値
4.CAC:顧客獲得単価
5.Churn Rate:解約率
また本記事は、「これからSaaSビジネスに携わる」といった方にとっても役立つ形を意識し執筆しましたので、新しいパートナー企業の方や中途入社でメンバーがチームに加わった際などに用語を説明したり、解説したりする社内でのシーンなどでもご利用いただければ幸いです。
今回ご紹介した用語を理解しておけば、会話や情報共有などがスムーズになります。本記事をどうぞ繰り返しご活用ください。
- 成長根拠として、株式会社富士キメラ総研は調査結果にて次のように説明。
“初期導入および運用コストの削減、機能拡張性への期待、短期間での導入などの利点によりSaaSが増加している。今後もSaaSを軸に市場拡大が予想される”
引用元:プレスリリース:『ソフトウェアビジネス新市場 2023年版』まとまる(2023/8/16発表 第23091号) ↩︎ - Daniel Khachab: “We Are in the Middle of a Cold War for AI Talent” | E1220 – YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=pGU78Q5tJgA ↩︎